電験三種 やさしい解説 (機械)  「誰でもわかる電験参考書」

初心者にはとても難かしい電験三種。 市販の参考書を読んでも、電気初心者にとってはわからないことばかりです。 これから電験の勉強を始める電気初心者の方に向けて、電験の内容をやさしく解説した「誰でもわかる電験参考書」の作成をしています

変圧器10 等価回路No.2

変圧器10 等価回路No.2

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等価回路No.2

 

励磁電流

変圧器の二次側を無負荷(開放)にして、一次側に電圧を加えたときに流れる電流を

励磁電流(Io)と言います (1)

励磁電流は、磁束を作る磁化電流(Im)と

鉄損を発生させる鉄損電流(Ii) からできています

  

励磁回路

励磁電流(Io) 磁化電流(Im) 鉄損電流(Ii)から成り立つ励磁回路は次のようになります

(2)

 

1       励磁回路

Io : 励磁電流

Im : 磁化電流

Ii : 鉄損電流

 

この励磁回路を、「理想の変圧器」の回路に組み込んだ等価回路は、次のようになります

 

2

   

注釈                                   

(1)

励磁とは

磁性体を磁化すること、またコイルに電流を流して磁束を発生させることです

 

 

(2)

図1について、更に詳しく書くと次のようになります

 

Yo : 励磁アドミタンス (GoとBoを合成したもの)

Go : 励磁コンダクタンス 

Bo : 励磁サセプタンス

 

 

「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器10 等価回路No.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器9 等価回路No.1

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等価回路No.1

理想の変圧器

巻線に発生する抵抗損漏れ磁束による損失などが全く無く

一次側の電圧,電流をすべて二次側に変圧変流することのできる変圧器のことを

「理想の変圧器」と言います

 

「理想の変圧器」を使った等価回路について説明していきます

  

等価回路

「理想の変圧器」には抵抗損や漏れ磁束による損失などがありませんが、

実際の変圧器には、巻線に発生する抵抗損漏れ磁束による漏れリアクタンス

あります

 

それらの損失を「理想の変圧器」の外部に接続した等価回路は、次のようになります

 

 

漏れリアクタンス

まっすぐな一本の導線に電流が流れると、アンペア右ネジの法則により導線の周囲に磁束が発生します

この法則をコイル(巻線) に当てはめて考えます

コイルに電流を流すと コイルの中に磁束が発生するが、この時コイルの外にも

磁束は発生しています。このコイルの外に発生する磁束を漏れ磁束と言います

(コイルの中に発生する磁束を主磁束と言います)

 

この漏れ磁束によりコイルに誘導性リアクタンスが発生し、

この漏れ磁束により発生した誘導性リアクタンスを漏れリアクタンスと言います

(1)

 

 

注釈                                   

(1)

誘導性リアクタンスとは、交流でコイル(巻線)に発生する抵抗の一種です

コイルに交流電流を流すと、コイルに磁束が発生して、磁束の増減が起きるため

コイルに逆起電力が発生します

逆起電力によりコイルに逆電流が流れ、もとの電流の流れを妨げて抵抗のような働きをします

 

主磁束に対して発生するリアクタンスの事を 主リアクタンス

漏れ磁束に対して発生するリアクタンスの事を 漏れリアクタンス と言います

 

 

 

 

「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器9  等価回路No.1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器8 変圧器に生じる誘導起電力

変圧器に生じる誘導起電力

 

変圧器の一次側に交流電圧を加えたとき

一次巻線及び二次巻線に生じる誘導起電力を求める公式は次のようになります

 

E1=4.44fN1Φm・・・一次巻線に生じる誘導起電力

E2=4.44fN2Φm・・・二次巻線に生じる誘導起電力

 

E1 ,E2 : 一次巻線及び二次巻線に生じる誘導起電力 (1)

f [Hz] : 周波数

N1 ,N2 :1次巻線及び2次巻線の巻数

Φm :磁束の最大値 (2)

 

 この公式を「Φm =」 の形にすると、磁束の最大値を求めることができます

 

注釈                                 

(1)

一次巻線に交流電流が流れると自己誘導が起きて、

一次巻線にも誘導起電力が発生します

 

(2)

交流での電流の値は常に変化し、その変化は正弦波として表すことができます

そのとき電流値の変化に合わせ、鉄心に発生する磁束の変化も正弦波になります

  

変圧器に生じる誘導起電力の出題例  2008 問7

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「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器8 変圧器に生じる誘導起電力

 

変圧器7 定格容量

定格容量

 

変圧器の定格容量

変圧器の定格

変圧器の定格とは 指定された電圧、周波数における使用限度を表したものです

 

定格容量

定格二次電圧、定格周波数、力率100%の時の二次端子間の皮相電力 のことを

定格容量と言い、単位は [V・A]、または [kV・A] を使います

  

定格容量と電圧、電流の関係を表す式は次のようになります

Pn = V2n × I2n

Pn [V・A] : 定格容量

V2n :定格二次電圧

I2n  :定格二次電流

  

また、V1 I1 = V2I2であるため、次の関係式も成り立ちます

Pn = V1n × I1n

Pn [V・A] : 定格容量

V1n :定格1次電圧

I1n  :定格1次電流

 

上の2つの式より、次の式が成り立ちます

Pn = V1n × I1n = V2n × I2n

 

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「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器7  定格容量

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器6 巻数比 No.4

巻数比 No.4

 巻数比、電圧比、電流比の関係を例題で見てみましょう

 

例題1

一次側の巻数100、二次側の巻数10の変圧器がある

一次側に6600[V]の電圧をかけ、2[A]の電流を流したとき

二次側にあらわれる電圧V2と電流I2を求めよ

 

V2 = 660  I2 = 20

   

例題2

巻数比4の変圧器がある

一次側に400Vの電圧をかけ、20Aの電流を流したとき

二次側にあらわれる電圧V2と電流I2を求めよ

   

V2 = 100  I2 = 80

 

 

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「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器6 巻数比 No.4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器5 巻数比 No.3

巻数比 No.3

 

一次側電力と二次側電力

巻数比と電圧比と電流比の関係をまとめると次のようになります

a = N1/N2 = V1/V2 = I/ I1 

上の式の   V1/V2 = I/ I1   の部分を変形させると 次のようになります

  V1 I1  =  V2 I2  

 

左項のV1 I1 は一次側の電力を、右項のV2 I2 は二次側の電力を表しています 

このことから、変圧器の

一次側の入力電力二次側の出力電力 は同じ値になることがわかります

                     

 V1 I1   =   V2 I2

一次側の入力電力  =  二次側の出力電力

 

 変圧器の 一次側電力二次側電力 の関係を表す式

V1 I1  =  V2 I2

 V1 : 一次電圧

V2 : 二次電圧

I1 : 一次電流

I2 : 二次電流

  

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難しい参考書でお悩みの方へ

 

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器5 巻数比 No.3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器4 巻数比 No.2

巻数比 No.2

 

電圧比と巻数比

一次側と二次側の 電圧比巻数比 の関係を表す公式は次のようになります

電圧比巻数比 の関係を表す式 

V1 V2 = a

 V1 : コイル1の電圧

V2 : コイル2の電圧

a : 巻数比

 

巻数比と電圧比は同じになります

 

電流比と巻数比

一次側と二次側の電流比巻数比 の関係を表す公式は次のようになります

 

電流比巻数比 の関係を表す公式

 I1 / I2 = 1/a

I1 : コイル1に流れる電流

I2 : コイル2に流れる電流

a : 巻数比

 

巻数比と電流比は逆の関係になります

  

 

 

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「誰でもわかる電験参考書」

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器4 巻数比 No.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器3 巻数比 No.1

巻数比 No.1

 

巻数比

変圧器に巻かれている一次側と二次側の巻き線量の比を巻数比と言い、

巻数比を変えることにより、二次側の電圧と電流の値を変えることができます

それでは、巻数比と電圧比、電流比の関係を見ていきましょう

 

巻数比の公式

変圧器に巻かれている一次側と二次側の巻き線の 巻数比aとすると、

巻数比aを表す式は次のようになります

 

一次側の巻数をN1、二次側の巻数をN2としたときの巻数比a を表す式

a = N/ N2

 a : 巻数比

N1 : コイル1の巻数

N2 : コイル2の巻数

 

一次側の巻数より、二次側の巻数を少なくした場合、降圧用

一次側の巻数より、二次側の巻数を多くした場合、昇圧用変圧器 になります

 

 

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難しい参考書でお悩みの方へ

 

 

「誰でもわかる電験参考書」機械

変圧器3  巻数比 No.1

 

変圧器2 変圧器のしくみ No.2

 変圧器の分類方法から、変圧器のしくみについて見てみましょう

 

内鉄形と外鉄形

変圧器を 鉄心と巻線の位置関係 から見ると内鉄形と外鉄形に分けられます

鉄心が巻線の内側にあるものを内鉄形

鉄心が巻線の外側にあるものを外鉄形 と言います

 

鉄心

鉄心の構造は、厚さ0.35mm程度の けい素鋼板を絶縁被覆して積み重ねた積層鉄心(成層鉄心) です (1)

 

厚さ0.35mm程度の薄い鋼板を使用する理由は、

交流電流により鉄心に発生する鉄損(ヒステリシス損及びうず電流損) を防ぐためです

  

冷却方式による分類

変圧器を冷却方式で分けると、主に

空気で変圧器を冷却する乾式油で変圧器を冷却する油入式 に分けられる

その他にガス(SF6など)で冷却するガス冷却式 があります

 

油入変圧器

油入変圧器は、鉄心と巻線を 絶縁油の入った外箱に収めて絶縁油に浸し

油を冷やす放熱機(ラジエータ)、端子をケースから絶縁するブッシングなどからできています

   

 注釈                                   

 (1)

薄い珪素鋼板を積み重ね、幾層にもなっている状態の鉄心のことを積層鉄心、または成層鉄心と言います

珪素(けい素)の元素記号はSi 、シリコンとも呼ばれます

  

 

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「誰でもわかる電験参考書」理論

「誰でもわかる電験参考書」機械

  変圧器2    変圧器のしくみ No.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変圧器1 変圧器のしくみ

 

それでは今回から「誰でもわかる電験参考書」機械 の 内容の一部を

掲載していきます

 

更新はスローペースですが、皆さんの勉強のお役に立ててください 

 

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「誰でもわかる電験参考書」理論

「誰でもわかる電験参考書」機械

   変圧器1 変圧器のしくみ

 

 

 

以下、文字部分のみ表示します

 

 

変圧器のしくみ

変圧器とは、電圧を変換するための機器で

高圧から低圧へ変換する降圧低圧から高圧へ変換する昇圧 のどちらも

行うことができます

また、変圧器で変圧を行った場合、電流の値も変化します

 

変圧器の構造

鉄心に2組のコイルを巻きつけたもので、コイルの巻き数を変えることにより

2次側の電圧と電流の値を変えることができます(1)

 

電源側を1次側、負荷側を2次側と言います

 

変圧器の原理

1次側コイルに交流電流を流すと、アンペア右ねじの法則(2) により 鉄心には

交番磁束が発生する (3)

その磁束は2次側のコイルを貫き、電磁誘導により2次側のコイルに誘導起電力が発生して電流が流れます(電圧も発生) (4)

 

変圧器は交番磁界(5) により発生する電磁誘導を利用しているため、交流でのみ使用できて、直流では使用できません

 

 

 注釈                              

(*1)

コイルを日本語にすると、巻線 になります

コイル = 巻線

 

(*2)

アンペア右ねじの法則とは、

導線に電流を流すと導線の周りに、電流の進行方向に対して右回りに磁界(磁束)が発生することを表した法則です

 

(*3)

交番磁束とは、大きさと向きが定期的に入れ替わる磁束のこと

交流では、電流の向きと大きさは時間とともに変化しているので、発生する磁束の向きと

大きさも 時間とともに入れ替わる

 

(*4)

コイルを磁束が貫き、磁束が増減すると起電力が発生します

このことを電磁誘導と言い、この時発生した起電力を誘導起電力と言います

誘導起電力が発生すると、起電力と同じ向きに電流が流れ 電圧も発生します

 

(*5)

磁界とは磁束の発生している場 のこと